日本大学通信教育部・商学部・商業学科
教職課程レポート

科目「職業指導」

課題「学習進路指導の現状における問題点を
明らかにし、今後の方向について考察しなさ
い」

評価「(合格)」

参考文献「なし。職業指導の教科書をまとめ
ただけ」

一、学校進路指導の現状における問題点
 進路指導の目的は、生徒が主体的に自らの
進路を選択・計画し、その後の生活によりよ
く適合し、進路先において自己実現できるよ
うにする能力を育成することである。しかし
ながら現状にはそれら目的が果たされず、基
本的な進路選択能力の不備、無目的な進学や
就職、進路先での不適応や自己実現未達成な
どが見られる。
@進学率上昇に伴う問題
 進学率の上昇により、進学を当然のことと
考え、その意味を深く考えることに積極性を
欠いた状態で上級学校に進み、その結果入学
後の目標が見つけられず勉学意欲の欠如・中
退といった不適応を起こすケースが見られる。
また学校においても進学を当然のことと考え、
とにかく上級校へ安全に進学させることを
第一義とした学業成績による輪切り指導によ
り、生徒の志望とは異なった不本意な進路の
選択を余儀なくさせ、その結果進学先での不
適応を起こさせている。さらには家庭におい
ても、進学は自明の事であって、進学するこ
との目的を見出そうとする生徒の活動に対し
積極的ではない傾向が見うけられる。
A学歴崇拝による問題
 進学率上昇の結果、より良い学校への進学
が生徒の将来の成功に結びつくという考え方
により、生徒の適性や希望を重視しない指導
が行われている。学校においては受験対策・
受験指導が進路指導であり、合格率がその成
果であるとして捉えられ、家庭においてもよ
り良い学校へ進学することが良い進路指導で
あると捉えられている。
B社会システムの問題
 上級校の入学試験時の学業成績偏重による
合否判定や、就職時の学歴による受験機会の
制限が顕著に見うけられ、その結果学校での
指導が受験対策・合格対策中心のものとなっ
ている。したがって学業において優秀な成績
を上げるという一面だけが学業の動機となり、
本来の自己実現の手段としての学業という面
がないがしろになっている。さらには学業成
績や学歴が、その後の人生の全てを決めるか
のような錯覚を与えがちになり、その後の人
生設計に対して狭小な考えしか持てない傾向
がある。
C社会環境の問題
 生徒の身近に、自分の人生の目標設定につ
いて指標となるような体験や機会が非常に少
なくなってきている。したがって進路や職業
に対する考え方が刺激を受ける環境に乏しく、
その進路意識や進路選択能力に未発達な部分
が見うけられる。
D学校組織の問題
 教員間において進路指導能力や進路指導に
対する認識にバラつきがあり、必ずしも本来
の目的に沿った指導がなされているとはいえ
ない場合が多い。また現在の「学級活動」や
「ホームルーム活動」での目的の一つという
位置付けでは、各担任の負担が非常に大きく、
結局卒業年次の一時的な指導、画一的な指導
になりがちである。

二、今後の方向
@進路指導の教育化
 生徒が将来へ向けての人生観や職業観を育
成し、自己実現を図る上での準備・努力が行
えるようにするには、低学年からの継続的か
つ専門的な指導が必要である。したがって現
在の「学級活動」や「ホームルーム活動」の
目的の一部としての進路指導ではなく、独立
した専任教員による教科としての進路指導が
求められる。
A生涯教育化社会
 人生を通じての学習が望まれ、またその学
習が適正に評価される社会が実現されれば、
学校の一時期だけの学業成果のみがその後の
人生を左右するという誤った認識を改めさせ
ることが可能となり、また生徒に生涯を通じ
て学び続けることの必要性を認識させ、自発
的な学習意欲を育めることとなる。
B就職・採用方法の改善
 企業の採用や評価が学歴とはかかわりなく、
能力本位・人物本位に改められれば、学歴の
みを目的とした進路選択や特定校への過度の
進路集中が改善され、また進路選択の目的が
本来的な自己実現の手段として認識されなお
すと考えられる。
C入試制度の改革
 学業成績のみならず、生徒の多彩な能力を
総合的に評価する方向での入試選抜の改革が
望まれる。