日本大学通信教育部・商学部・商業学科
教職課程レポート

科目「貿易論」

課題「ガット・ウルグアイ・ラウンドの成果
のうち、主なものについて説明せよ」

評価「教材の理解度(合格)」

参考文献「なし。貿易論の教科書をまとめた
だけ」

一、世界貿易機関(WTO)の設立。
 ガットが法的には「関税貿易一般協定を暫
定的に適用する締約国の集団」という位置で
あったのに対し、世界貿易機関(WTO)の
設立により、共通の紛争処理手続きを持ち、
ウルグアイ・ラウンドの合意事項を実行する、
永続的かつ本格的な国際機関の設立を見た。
 これによって1948年のガット発効後、
国際貿易機関(ITO)の設立が流産して以
来の、長年にわたるガットによる暫定的な自
由貿易体制への取り組みに終止符が打たれ、
貿易自由化と貿易ルールの強化を目指したウ
ルグアイ・ラウンドの合意事項がより一層確
実に実行され、その地位もより高まり、世界
貿易の自由化が図られることとなった。
 従前のガットにおいては、紛争処理に関し
て知的所有権やサービスといった成長の速い
重要な分野は対象外であり、さらには手続き
進行が全てコンセンサス方式であり、特に紛
争処理に関しては一国の反対により運用が阻
害されやすく、勧告無視が相次いでいたとい
う問題点があった。
 それがWTOにおいては、サービス・知的
所有権組織までも包含する機関となり、また
紛争処理に関してネガティブコンセンサス方
式が採用され、もはや一国の反対によってパ
ネル勧告の採択阻止をできなくなった。これ
によって手続き進行が妨げられにくくなり、
迅速で自動的な手続きが可能となった。また
上訴しても敗れた場合は事態改善・相手への
補償が要求され、その実行がなされない場合
にはWTOによる制裁が課せられるという司
法的色彩が強化され、一国の一方的経済措置
の制限が図られた。
二、各国の大幅な関税率引き下げと、従来ガ
ットの規制外であった農産物・繊維・サービ
ス貿易をガットの規制下に置いた。
 先進国での鉱工業品に対する関税率の大幅
な引き下げ・上限の統一、あるいは関税の廃
止により、鉱工業品の輸出者にとって各国市
場への進出が非常に容易になった。
 欧米での農業補助金や市場の閉鎖性が農業
国の輸出を阻害していたが、農産物のガット
規制化により、農業補助金や輸出補助金が減
額されることにより、それら国々への輸出が
容易になった。また政府の補助金支出が節減
され、国家間のダンピング紛争も逓減される。
 さらに農産物に対する非関税障壁(輸入数
量制限、課徴金、輸出自主規制など)が関税
化という透明度の高い基準に置きかえられる
ことにより、関税率引き下げの対象とされた。
 多国間繊維取決めの元での、繊維製品に対
する輸入割当て制限の段階的な廃止や、輸入
に対する高い関税率の引き下げにより、繊維
輸出国はより多くの輸出額増大が見こまれる。
 特に鉱物と繊維の主な輸出国である発展途
上国においては、それらの関税や輸入割当て
の廃止により、より大きな利益をもたらすと
ともに、これらの貿易額が飛躍的に上昇する
と考えられる。
 サービス貿易分野においては国際貿易ルー
ルは存在しておらず、各国はこれを国際的な
競争から保護する傾向にあった。しかしなが
らサービス貿易が世界貿易額の20%を占め
るようになり、またその成長が著しく速い分
野にガットの基本的な公正貿易のためのルー
ルの枠組みが作られることとなり、その市場
の開放が図られた。
三、知的所有権の厳格な保護を定めた。
 特許権、著作権、商標権などの知的所有権
の保護基準が、国によって異なっているため
国家間の紛争が絶えなかった。その改善のた
め、発展途上国と先進国との間で、知的所有
権に関してその保護の国際基準や執行の要件
についての合意が成立した。その結果として
海外投資と技術移転の促進が期待されている。
四、自由公正な貿易の保障のためのルールを
規定した。
 ガットの無差別の義務に反するセーフガー
ド措置に対する調査手続きが明確化され、措
置期間も四年以内とする制限が加えられ、既
存の措置は四年以内に撤廃し、将来の使用も
禁止された。
 反ダンピング法をある種の保護主義の手段
と見なし、反ダンピング調査のルールとダン
ピング被害の決定基準を明確にし、ダンピン
グ防止税の期間を五年間とした。
 補助金とそれに対抗する相殺関税による貿
易上の紛争改善のため、国内産業への補助金
使用について、その合法・違法の基準を定義
し、特に輸出補助金の使用が厳しく抑制され
た。それにともない相殺関税の適用も困難と
なった。