日本大学通信教育部・商学部・商業学科
教職課程レポート

科目「貿易論」

課題「信用状独立の原則について説明せよ」

評価「全項目(合格)」

参考文献「なし。貿易論の教科書をまとめた
だけ」

「信用状契約は売主と買主の間の売買契約と
はまったく別個の独立した契約である」とい
うのが信用状独立の原則である。
 通常、信用状は売買契約の存在を前提とす
る。すなわち売主と買主との間でまず売買契
約が成立し、その契約中の支払条件に関する
条項の定めるところにしたがって、買主が取
引銀行に依頼し信用状の開設を見るものであ
る。
 しかしながら一度信用状契約が開設され、
開設銀行と売主との間に信用状契約が成立す
れば、それは売主と買主との間の売買契約と
は独立した別個の契約となる。
 すなわち信用状は売主と信用状開設銀行と
の間の契約であり、売買契約は売主と買主と
の間の契約であって、それぞれは独立してい
るということであり、信用状に基づく当事者
の権利や義務は、信用状面の条項だけによっ
て決定されるべきであり、売買契約の条項に
は左右されないということになる。
 言いかえれば、売買契約の条項を遵守した
としても、信用状面の条項を満たしていなけ
れば、開設銀行から手形の支払いを受けえな
いし、また売買契約の条項を完全に履行して
いなくとも、信用状面の条項を満たしていれ
ば、手形の支払いを受けうるということであ
る。
 本来であれば、前提となっている売買契約
の条項と信用状面の条項は一致するはずであ
り、売主は信用状面の条項にしたがって手形
を振り出せば、売買契約の条項をも遵守した
ことになる。しかしながらそれらの条項が不
一致であった場合に、どのような対応がなさ
れるのかを以下に記述する。
@売買契約になかった条項が信用状面に挿入
されている、あるいは条項の内容が異なって
いる場合
 この場合、売主が売買契約の条項を誠実に
履行したとしても、信用状面の条項を満たさ
ない場合がおこりうるので、開設銀行に手形
の支払いを拒絶される可能性がある。
 したがって、売主は買主に信用状の訂正を
要求できる。売主は、買主側が売買契約の条
項に適合した信用状を開設しないかぎり、契
約上の義務を履行する必要はない。買主が信
用状の訂正に応じない場合には、売買契約を
破棄する事も可能である。
A売買契約にあった条項が信用状面に含まれ
ていない場合
 この場合、売主が売買契約にはあるが、信
用状面にはない条項を守らなくとも、売買契
約違反にはなるが信用状契約違反にはならな
い。したがって開設銀行は売主の手形の引受
け・支払いに応じなくてはならなくなる。な
ぜなら、開設銀行の支払い義務は信用状の内
容によって決まるからである。
 さらに買主も信用状開設を依頼した時の取
引銀行との契約により、銀行に手形金額を支
払わなくてはならなくなる。極言すれば、売
買契約が誠実に履行されていないにもかかわ
らず、買主は代金を支払わなくてはならなく
なるので、非常に不利益な立場に置かれるこ
ととなる。ただし、買主は売買契約違反によ
り、売主に対して損害賠償を請求することが
できる。
 このように、信用状に基づく開設銀行の手
形の支払い義務は、信用状面の条項のみによ
って決定され、他の何物にも影響されない。
したがって買主は、売買契約の条項はもれな
く信用状面の移しておくことが、後日の紛争
を避ける最善の方法である。ただし実際問題
としては、売買契約の全条項やあまりに微細
な規定まで信用状に盛りこむことは現実的で
はない。しかしながら当事者間の特殊な取決
めは、なんらかの形で移しておくことが望ま
しい。
 なお、なんらかの事情で売買契約の条項と
合致しない信用状が開設された場合には、そ
れが取消不能信用状の場合、その撤回や変更
が利害関係者全員の同意なしには行えないの
で注意を要する。すなわち、ある当事者の一
方的な意思で撤回や変更は許されないのが原
則である。
 ただし、この原則をあらゆる場合に貫くと、
買主の誤りを売主が悪用して有利な立場を占
める事態が考えられ、非常に不合理であるの
で、信用状開設のときと修正のときとの間に
売主が善意で信用状を信じて行動を起こさな
かった場合に限り、誤りを修正することが認
められている。