日本大学通信教育部・商学部・商業学科
教職課程レポート

科目「国際金融論」

課題「BIS規制の意図とその影響について
検討しなさい」

評価「何も書いてなかったが合格」
「多少の整理不足がみられる。マーケットリ
スクを考慮したBIS第2次規制への言及も
ほしいところ」なんて書いてあった。

参考文献「なし。国際金融論の教科書をまと
めただけ」

 BIS規制とは「国際業務を営む銀行の自
己資本比率を8%にする」というものである。
その意図は、@国際的な銀行システムの安定
性の強化、A銀行間競争の不平等の除去、で
ある。
 @については、銀行の体力の強化であり、
特に国際的な活動を行う銀行が、発展途上国
の累積債権の貸倒れに対して、自己資本を充
実することにより対応しようと意図されたも
のである。
 自己資本比率は「自己資本÷資産」で求め
られるのであるが、ここで資産の算出に関し
ては資産項目の性質に応じてリスクを定め、
リスクの小さい資産ほど額が小さくなるよう
定められている。したがって自己資本比率を
高めるには、低リスクの資産が多いほど有利
となる。発展途上国向け債権は、資産のうち
最もリスクの低いものとしてあげられている
から、その保有は自己資本比率の改善につい
ては有効な手段となる。
 また自己資本は、資本金・貸倒引当金・有
価証券含み益などから構成されているので、
貸倒引当金を積み増しして貸倒れに備えるこ
とは、自己資本比率の充実につながるのであ
る。
 実際に82年から85年にかけて、中南米
を中心とする発展途上国の債務返済困難が表
面化し、リスケジュールの要請が相ついだ。
 これは発展途上国の自助努力の限界を示し、
とりあえずは銀行の自己資本比率の向上によ
る体力の強化によって対応するほかないので
ある。
 Aについては、国際的な活動を行う銀行に
ついては、共通のルールにより公正な競争を
行わせようと意図されたものである。
 先進諸国の規制緩和により、各国の金融市
場で内外の銀行が競争をくりひろげてきたが、
銀行業の規制は各国によってまちまちであり、
その競争条件が平等とはいえない場合がある。
そこに共通のルールによる規制をかけようと
するものである。
 表層的な解釈では上記のようなこととなる
のであるが、重要なことは自己資本比率8%
規制が「銀行および金融業務を営む子会社を
含む連結ベースにより銀行に適用される」と
されている点にある。
 すなわち銀行本体のみならず、その子会社
を含めたかたちでの資金移動に対して有効な
規制を設けることにより、規制逃れを排除し、
それにより国際的な資金移動をコントロール
しようとするものである。
 この場合の国際的資金移動とはユーロ市場
のことをさすのであるが、ユーロ市場の特性
として、自由かつ規制のない銀行間市場であ
って、そこに中央銀行が存在しないという事
実がある。したがって各国の金融政策いかん
によっては、国内市場からユーロ市場への資
金の流出・流入をひきおこし、それが金融政
策の実効面での障害となっているのである。
 むろんその規制をはかればよいのであるが、
それが一国内のものであるかぎり、その実効
力は期待できない。なぜなら規制の及ばない
海外法人を通じたユーロ業務の継続も可能で
あるし、また他国の金融機関のより一層のユ
ーロ業務の拡大をはかる結果になり、結局は
規制をはかった国だけが不利益な目を見る結
果となる。したがって、各国の共同行動によ
る規制をとらざるを得なくなるのである。
 上記のBIS規制によれば「子会社を含む
連結ベース」の自己資本比率を規制するもの
であるから、BIS規制のおよぶ国で国際的
な金融業務を営むものは、海外の子会社を含
めて、負債と資産の規制を受けることとなる。
したがってそこに含まれるユーロ市場での預
金・貸出をも規制下に置かれるのである。
 実際に自己資本比率に関して日本の銀行の
例を見てみると、自己資本に有価証券含み益
を算入できるので、当初は比較的容易に8%
を達成できたのであるが、90年以降の株価
暴落により急激に含み益が減少し8%維持が
困難となった。そこで各銀行はユーロ市場に
おいて劣後債による資金調達を行った。劣後
債は負債性資本調達手段の一つとみなされ、
BIS基準では自己資本の範囲に含まれてい
たからである。このような銀行の大規模な資
金調達は、ユーロ市場の資金需給の悪化をも
たらすものと考えられる。