日本女子大学・家政学部通信教育課程・食物学科
教職課程リポート

科目「衣生活学概論」

課題「洗剤の成分をあげ、各々の働きを説明しなさい」

評価「(合格)」

参考文献「衣生活概論の教科書、高校家庭科の教科書(東京書籍と実教出版の2種)を見てまとめただけ」

 洗剤は界面活性剤を主成分とし、その他に洗浄補助剤が配合されている。
(1)界面活性剤 界面とは「性質の異なる2つの物質の境界面」をいう。通常、界面において2つの物質は混じりあわず、分離した状態にあるが、界面活性剤はその界面に吸着していき、界面の性質を変える物質のことをいう。界面活性剤はその分子構造に親水基と親油基(疎水基)をもち、洗剤に使用される界面活性剤の水溶液においては、界面活性剤が繊維・汚れの界面に吸着し、その浸透作用、乳化・分散作用、再汚染防止作用により洗浄効果をもたらす。
@各作用の説明
a)浸透作用 水に溶解した界面活性剤の分子の親油基(疎水基)が、繊維および繊維に付着した汚れの表面に吸着する。これにより繊維と洗浄液の間・繊維と汚れの間の界面張力が低下し、洗浄液の繊維への浸透を促すとともに、繊維と汚れの付着力を弱め、もみ洗いやかく拌により汚れが繊維から離れて洗浄液中にとりだされる。
b)乳化・分散作用 洗浄液中にとりだされた汚れが、細かい固まりに分解される。汚れが油汚れの場合を乳化、固体汚れの場合を分散という。
c)再汚染防止作用 繊維の表面、および洗浄液中にとりだされた汚れの表面は、それぞれ界面活性剤の分子の親水基を外側にして覆われているので、汚れが再度固まりになることや、繊維に再付着することを防ぐ。
Aミセル 界面活性剤の水溶液濃度を上げていくと、界面に吸着しきれなくなった界面活性剤は、親油基(疎水基)を内側に、親水基を外側に向けて集合体を作りはじめる。それをミセルという。ミセルを作りはじめる界面活性剤の濃度をミセル形成臨界濃度(cmc)といい、この濃度に達するまで、洗浄力、浸透性、表面張力などの性能は上昇していくが、それ以降は頭打ちとなる。
B界面活性剤の種類 衣類洗浄用には陰イオン系と非イオン系の界面活性剤が多く使われる。
a)石けん(陰イオン系界面活性剤) 動植物油脂を水酸化ナトリウムや水酸化カリウムで煮て作られた脂肪酸塩である。水で加水分解して弱アルカリ性を示し、油性汚れの洗浄に効果がある。水中のマグネシウムやカルシウムなどの金属と結合して金属石けんを生じ、洗浄力の低下や洗濯物の汚染をまねく
b)直鎖アルキルベンゼンスルフォン酸塩(LAS)(陰イオン系界面活性剤) 衣料用合成洗剤に用いられている代表的な合成界面活性剤である。石油を原料とし、水に溶かすと中性を示す。冷水に対する溶解性が高く、硬水、酸、アルカリ液にも安定である。
c) ポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE)(非イオン系界面活性剤) 低濃度でもすぐれた洗浄力を発揮する。酸、アルカリに安定で、硬度成分の影響を受けない。水溶液の温度を上げると白濁する傾向があるので、低温洗浄がよい。
(2)洗浄補助剤 界面活性剤の性能や被洗物の仕上げ効果を高めるために配合される成分である。ビルダー、酵素、蛍光増白剤などがある。
@ビルダー 界面活性剤と併用することにより、その作用を助長する働きをもち、アルミノケイ酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、硫酸塩などがある。これらは洗浄液を一定のアルカリ性に保持する作用(アルカリ緩衝作用)、水の硬度成分を取りこんで封鎖する作用(金属封鎖作用)、ミセル増強作用などがある。
a)アルカリ緩衝作用 洗剤の液性は弱アルカリ性のものが多く、対して汚れには酸性のものが多い。したがって、汚れが洗浄液中に溶けだすと液性が酸性に傾き、酸性石けん(水に溶けない)が生じて洗浄効果が低下することになる。そこで洗浄効果を低下させないために、洗浄液のアルカリ性を保持する作用をもつ物質の添加が有効になる。主なものとしてケイ酸塩、炭酸塩があげられる。
b)金属封鎖作用 洗濯に使用される水中には、マグネシウムやカルシウムなどの金属が微量含まれている。これらは石けんや合成界面活性剤と結合して金属石けん(水に溶けない)を生じ、洗浄力の低下や洗濯物の汚染をまねく。そこで、これら金属元素を取りこんで封鎖する物質の添加が有効になる。主なものとしてアルミノケイ酸塩があげられる。
c)ミセル増強作用 合成界面活性剤の臨界ミセル濃度を下げる働きがあり、洗浄液の濃度が低い状態でも洗浄力を維持できる作用がある。主なものとして硫酸塩があげられる。
A酵素 界面活性剤だけでは落とすことが難しい汚れを除去するために用いられる。タンパク質を分解するプロテアーゼ、油脂を分解するリパーゼ、デンプンを分解するアミラーゼ、綿や麻などのセルロース繊維表面の繊維素を分解するセルラーゼなどがある。
B蛍光増白剤 汚れを除去する作用はないが、可視ではない紫外線を吸収して、これを可視の350nm〜500nmの青紫・青緑色の反射光(蛍光)に変え、黄ばみや黒ずみを目立たなくさせて、白さが増したかのように見せる染料の一種である。