日本女子大学・家政学部通信教育課程・食物学科
教職課程リポート

科目「食物学概論」

課題「『生命維持のために、なぜ食物摂取が必要なのか』について、食物の摂取、栄養素の働きなどの観点から、三大栄養素のうち1栄養素を取り上げて説明しなさい」

評価「(合格)・・・『全体的なまとめが抜けている』というような意味のことが書かれていた」

参考文献「食物学概論の教科書の他、ネットでもチマチマと調べてまとめた」

取り上げた栄養素「糖質」

 食物摂取の目的とは「身体活動のエネルギー源とする」「身体の骨格や組織や筋肉を構成する」「身体の生理的機能を調節する」ために必要な栄養素を食物を通じて摂取することである。
その中で糖質は「身体活動のエネルギー源」となるものである。ただし多糖類の食物繊維である、セルロース、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸などは、ほとんど人体で消化吸収されないのでエネルギー源とはならず、本リポートの「生命維持」という趣旨にあてはまらないと思われるので触れない。

(1)糖質の種類
@単糖類
 糖質の最小単位である。消化酵素によってはこれ以上分解されない。栄養上重要な単糖類は、ぶどう糖、果糖、ガラクトースの3種類である。
ぶどう糖−果実に多く含まれている。
果糖−果実や蜂蜜に多く含まれている。
ガラクトース−乳糖(ぶどう糖とガラクトースが結合したもの)という形で存在する。
A少糖類
 単糖類が2〜10個結合したもの。栄養上重要な少糖類は二糖類(単糖類が2分子結合したもの)の、麦芽糖、しょ糖、乳糖の3種類である。
麦芽糖−ぶどう糖2分子が結合したもの。さつまいもや水あめに多く含まれる。
しょ糖−ぶどう糖1分子と果糖1分子が結合したもの。さとうきびやてんさいに多く含まれる。一般に使用される砂糖の主成分である。
乳糖−ぶどう糖1分子とガラクトース1分子が結合したもの。哺乳類の乳汁に含まれる。
B多糖類
 単糖類が多数結合した高分子化合物である。栄養上重要な多糖類は、でん粉、グリコーゲンの2種類である
でん粉−アミロース(多数のぶどう糖が直線状に結合したもの)と、アミロペクチン(多数のぶどう糖が枝分かれ状に結合したもの)の化合物である。穀類、いも類、豆類に多く含まれる。
グリコーゲン−ぶどう糖が多数結合したものである。動物の肝臓や筋肉に存在する。

(2)糖質の主たる摂取方法(日本の場合を想定)
@米−でん粉を多く含む。主食とする。精米して炊くことにより摂取することが多い。
A小麦−でん粉を多く含む。主食とする。パンやめん類に加工して摂取することが多い。
Bいも類、豆類−でん粉を多く含む。副食とする。いろいろな調理法がある。
C肉−グリコーゲンを含む。副食とする。いろいろな調理法がある。
D牛乳−乳糖を多く含む。そのまま飲用するほか、いろいろな調理法がある。
E砂糖−しょ糖が主成分である。食品の甘味つけ、菓子類への添加として摂取することが多い。
F果実類−ぶどう糖や果糖を多く含む。そのまま食することが多い。
*他にもさつまいもや水あめには麦芽糖が多く含まれる。また清涼飲料水にはぶどう糖や果糖が含まれていることが多い。

(3)糖質の摂取後の消化分解
 口腔から入ってきた糖質は最終的にはぶどう糖まで分解されるが、単糖類、二糖類、多糖類の違いによって消化分解の過程が異なる。
@肝臓へ至るまでの糖質の分解
単糖類(ぶどう糖、果糖、ガラクトース)
 そのまま小腸で吸収され、門脈を経由して肝臓へ運ばれる。
二糖類
 そのまま小腸まで運ばれたあと、小腸粘膜上皮細胞に存在する消化酵素により下記のように分解され、門脈を経由して肝臓へ運ばれる。
麦芽糖−マルターゼにより「ぶどう糖」に分解される。
しょ糖−スクラーゼにより「ぶどう糖と果糖」に分解される。
乳糖−ラクターゼにより「ぶどう糖とガラクトース」に分解される。
多糖類(でん粉)
 唾液アミラーゼによって若干分解される。そのあと小腸ですい臓アミラーゼにより「麦芽糖」に分解され、門脈を経由して肝臓へ運ばれる。
 したがって肝臓内に運ばれた時点での糖質は、ぶどう糖、果糖、ガラクトースといった単糖類となる。
A肝臓内での分解
 果糖とガラクトースがぶどう糖に分解される。したがって糖質は最終的にすべてぶどう糖に分解されることとなる。

(4)肝臓でのぶどう糖の行方
 次の3つのいずれかにわかれる。
@グリコーゲンの合成に使用され、肝グリコーゲンとして蓄えられる。なお蓄えられた肝グリコーゲンは、必要に応じてぶどう糖に分解されて血液中に送られることがある。
Aエネルギー源として利用される
Bそのまま血液中に送られる。

(5)血液中に送られたぶどう糖の行方
@血液から筋肉へ取りこまれたぶどう糖は次の2つのいずれかにわかれる。
 グリコーゲンの合成に使用され、筋グリコーゲンとして蓄えられる。
 エネルギー源として利用される
A血液から他の組織へ取りこまれたぶどう糖はエネルギーとして利用される。
B余分なぶどう糖は脂肪に合成され貯蔵される。

(6)ぶどう糖からのエネルギーの産生
 身体活動のエネルギー源はATP(アデノシン三リン酸)である。まず解糖系においてぶどう糖からピルビン酸が生成される過程で2個のATPと水素が作られる。その後、次の2つのいずれかにわかれる。
@酸素が充分存在する場合には、ピルビン酸からアセチルCoAと水素が生成され、アセチルCoAはTCA回路に取りこまれたあと、酸素と水を利用して2個のATPと水素を作る。解糖系からTCA回路での過程で作られた水素は、電子伝達系に入り、さらに34個のATPを生成する。これらの生成は細胞内のミトコンドリアで行われる。
A酸素が充分存在しない場合には、ピルビン酸から乳酸を生成する過程で2個のATPを作る。乳酸は肝臓へ運ばれ、ぶどう糖またはグリコーゲンを合成し再利用される。この生成にはミトコンドリアは関与しない。

(7)糖質摂取上の問題
 エネルギーとして利用されなかったぶどう糖は脂肪として体内に貯蔵されるため、過度の糖質摂取は肥満の原因となる。
 また、糖質を含む清涼飲料の多飲による糖尿病の発症―いわゆるペットボトル症候群―がある。すなわち「飲料摂取→血糖値上昇→口渇感→さらなる飲料摂取」の習慣化によりインスリンが大量に供給され、結果として血糖値が急激に下がることとなり、倦怠感や意識の混濁を引き起こす。