日本女子大学・家政学部通信教育課程・食物学科
教職課程リポート

科目「食物学概論」

課題「食物が関連する病気を1つ取り上げてまとめなさい」

評価「(合格) コメント→よくまとまっています。『GI値、低インシュリンダイエット』などという言葉にも関心を持つとよいでしょう」

参考文献「食物学概論の教科書、http://www.med.or.jp/chishiki/tounyou/001.html〜006.html(日本医師会Webサイト・糖尿病)」

取り上げた病気「糖尿病」

 血液中のぶどう糖は、各組織でエネルギーとして使えるよう常に一定の濃度に調整されている。この濃度を血糖値という。血糖値が低すぎる場合には、アドレナリンやグルカゴンといったホルモンが肝臓グリコーゲンを分解して血液中のぶどう糖を増やす。逆に血糖値が高すぎる場合には、インスリンというホルモンがぶどう糖からグリコーゲンや脂肪を合成したり、細胞での代謝を促進して血液中のぶどう糖を減らす。
 糖尿病は、このうちのインスリンが不足したり、分泌されなくなったり、正常に作用しなくなって起こる病気であり、体内でぶどう糖がエネルギーとして利用できなくなり、血液中のぶどう糖濃度が上昇して腎臓から尿と混じって排泄されるものである。したがって「エネルギー不足のため疲労しやすくなる」「空腹感を覚えるので多食するが痩せる」「身体がぶどう糖を尿と一緒に排泄しようとするため多飲・多尿になる」などの症状が現れる。

 糖尿病は「インスリン依存型糖尿病」と「インスリン非依存型糖尿病」の2種類に分けられる。
「インスリン依存型糖尿病」は、インスリンを産生しているすい臓内のランゲルハンス島のβ細胞が、ウイルスの感染や自己免疫のために破壊され、インスリンの産生量が減少したり無くなったりして起こるものである。インスリンの産生自体が不足しているので、治療にはインスリン投与が必要である。日本では糖尿病全体の1〜3%を占めるに過ぎず、そのほとんどは小児である。
「インスリン非依存型糖尿病」は、インスリンは産生されるものの、インスリンの受容体に問題が生じて起こるものである。インスリンが肝臓や筋肉、脂肪組織で作用を発揮するのは、これらの組織にインスリンを受け取る受容体というものがあり、インスリンがそこに結合することで「ぶどう糖をエネルギー源として使え」とか「ぶどう糖からグリコーゲンを作れ」「脂質を作れ」といった指令が出されるからである。しかしながらその受容体が働かないと、すい臓が正常にインスリンを産生してもぶどう糖が利用できなくなる。また、徐々にすい臓のβ細胞の働きが低下してインスリンの産生が低下することもある。これは遺伝的素因に「食べすぎ」や「運動不足による肥満」「飲酒」「精神的ストレス」「加齢」など後天的要因が加わって発症すると考えられている。日本の糖尿病の95〜97%がこの型で、最近は小児の患者も増えている。

 糖尿病の病状が進行すると「糖尿病性網膜症」「糖尿病性腎症」「糖尿病性神経障害」という糖尿病の3大合併症の他に「動脈硬化症」「高血圧症」「感染症」も引きおこす。
「糖尿病性網膜症」
 糖尿病で血管が常に高血糖状態にあると、血管の壁やその内側を障害する。最もその影響を受けやすい場所の一つが、眼の網膜に栄養を供給する細小血管である。網膜症の初期症状としては、眼底検査で小さな血管の瘤(毛細血管瘤)や眼底出血が観察される。このような症状を放置すると大きな出血を機に段階的に視力が低下し、網膜剥離を起こして最悪の場合失明してしまう。
「糖尿病性腎症」
 腎臓には、血液をろ過して身体に不必要な老廃物などを尿として排泄する役割がある。ろ過の役割を担っているのが、毛細血管が集まっている糸球体と呼ばれるところである。網膜と同様、高血糖状態では細い血管は障害を受けやすいため、腎臓の働きを低下させ腎症を引き起こす。放置すると尿の中に大量のたんぱくが出るようになり、血圧も高くなり、さらに進行すると腎不全に移行し、老廃物などをろ過できなくなり、人工透析や腎臓移植などの治療を行わなければ命にかかわるようになる。
「糖尿病性神経障害」
 末梢神経が糖尿病によって傷んでくることにより、しびれたり冷えたり痛んだりする。放置すると激痛になり、やがて感覚が鈍くなり火傷やけがの痛みにも気づかないようになる。痛みを感じづらくなる結果、傷を治療することなく放置し潰瘍や壊疽を起こすことも少なくない。さらに化膿した傷を放置したために細菌が血液中に入り、敗血症になることもある。また神経障害は自律神経にも影響を及ぼし、便秘、下痢、尿の出が悪い、立ちくらみ、インポテンツなどを起こす。

 糖尿病の原因として食物が関連したものは、特に「インスリン非依存型糖尿病」において「過食」「美食」「肥満」「運動不足」があげられる。したがって糖尿病の治療には「食事療法」「運動療法」がとられる。その他にインスリン投与などの薬物療法もとられるが、ここでは触れない。
「食事療法」
 食事をすると血糖値は上昇してくるが、それに合わせてすい臓のβ細胞はインスリンを産生し、ぶどう糖を身体に必要なエネルギーとして利用させるようにして血糖値を下げる。したがって、糖尿病では必要以上に血糖値を上げず、β細胞を疲れさせないようにすることが重要になる。そのためには1日の生命活動を支えるのに必要なエネルギー量を決め、適正な量のたんぱく質、脂質、糖質、無機質、ビタミンを摂取するようにする。
「運動療法」
 運動不足になると、ぶどう糖の利用が減って血糖値が上がる。またぶどう糖を利用する筋肉が減り脂肪が増え、その結果インスリンの働きが悪くなる。したがって、適度な運動によりこれらの問題点を解決することが有効な治療法となる。ただし急激な運動は血糖値を必要以上に低下させ、逆に低血糖状態になることがある。