日本女子大学・家政学部通信教育課程・食物学科
教職課程リポート

科目「衣造形学」

課題「快適な衣服設計を行うための身体重要項目を10項目挙げ、その理由を述べよ」

評価「(合格) コメント→衣服設計のためには身体サイズを表す項目のみでなく、姿勢を表す項目も重要です。『胸幅・背幅』を加えると『はと胸かねこ背か』がわかります。『前丈』を加えると円背(?)か否かがわかります」と書いてあった。そして「袖丈・腰丈・股上」が赤線でチェックされていたので、要するに「胸幅・背幅・前丈」が抜けているということだろう。

参考文献「衣造形学の教科書、高校家庭科の教科書(東京書籍と実教出版の2種)」

 まず10項目の身体重要項目を挙げると「胸囲」「胴囲」「腰囲」「頸付け根囲と頸囲」「背肩幅」「背丈」「袖丈」「腰丈」「股上」「渡り寸法」である。それぞれの身体上の位置は3枚の図にまとめて添付した。以下各項目について説明する。
(なおスラックスなどの場合「股下丈」が重要になるが、おおむね裾をカットするなどの寸法直しで対応しているようなので、本稿では省いた)

1「胸囲」
 胸まわり寸法のことである。女性の場合は乳頭点を通る胸部を水平に一周した寸法を計測する。これを「バスト」と呼ぶ。男性の場合は、腕の付け根の下端に接する胸部を水平に一周した寸法を計測する。必ずしも乳頭点を通るとは限らない。これを「チェスト」と呼ぶ。
 胸部は呼吸行為により、周囲長が一定の範囲で変動するという特長がある。したがって上衣を着用した際に、息苦しさを覚えないようにサイズを決定しなければならない。また耐寒性や耐暑性という面から見た場合、胸部の空間がそれを高めたり低めたりする要因にもなる。さらに女性の場合には乳房の隆起という身体的な特長があるので、乳房からウエストへかけての体形上の大きな落差が存在する。「胸囲」はそれらのサイズ決定に重要な資料となる。

2「胴囲(ウエスト)」
 胴まわり寸法のことである。女性の場合は胴の一番細い所を一周した寸法を計測する。男性の場合は腰骨の上端のやや上を一周した寸法を計測する。
 スラックスやスカートなどの下衣の場合、ウエスト部分でホックやベルトで締めつけて止める構造のものが多い。通常、人間の身体はウエスト部分がくびれているからである。したがって締めつける際に、布地が余りすぎて見苦しくなったりしないように配慮する資料となる寸法である。逆に肥満などでウエストが極端に大きい場合には、布地が不足しないように配慮しなければならない。

3「腰囲(ヒップ)」
 腰まわり寸法のことである。男女を問わず腰部のもっとも突出した部分を水平に一周した寸法を計測する。
 スラックスやスカートなどの場合、それが着用できるかできないか(腰が入るか、ホックが閉まるか)という重要なことを決定する寸法となる。

4「頸付け根囲と頸囲」
 首(頸)まわり寸法のことである。女性の場合は主として「頸付け根囲」が、男性の場合は主として「頸囲」が利用される。
「頸付け根囲」は頸椎点と鎖骨の内側を通る首の付け根の周囲の寸法を計測する。「頸囲」は咽頭突起(のどぼとけ)の真下の寸法を計測する。
 襟がある上衣で、それがボタンで留めるものであったり、Yシャツのようにネクタイ使用を前提としたものでは「頸囲」が重要な意味を持つ。正しくない頸囲サイズの場合、首(頸)まわりがきつすぎたり、逆に緩すぎたりすることになる。詰め襟やハイネック、タートルネックでも同様である。また襟がない上衣では「頸付け根囲」が耐寒性や耐暑性、意匠上などの意味から重要になる。

5「背肩幅」
 右肩峰点から左肩峰点までを頸椎点を経由して肩の線に沿って計測した寸法である。
 腕は肩の関節を中心にして多方向に動作する。したがって一般的な上衣は、腕を覆う部分を「袖」として作り、身ごろの部分に接続した形態を持っている。そうすることにより腕の自由な動きを妨げないように工夫されている。その際、袖と身ごろの境界は、腕の動きを考慮して肩峰点のあたりに決められることが多い。そこで必要になるのがこの「背肩幅」という寸法であり、身ごろの肩幅を決定する材料となる。

6「背丈」
 頸椎点からウエストラインの後ろ中央までの寸法を背面に沿って計測したものである。
 上衣の上下の長さ(丈)を決定するために必要な寸法であり、この長さにある程度の余裕を加味して丈が決められる。人間は極度にかがんだ状態だと背丈が長くなるからである。また上衣のシルエットを考える際、ウエストのあたりまでは絞り、それ以下は広げるなどの意匠を取る際の資料ともなる。

7「袖丈」
 長袖の場合、右肩峰点から肘を通り手首点までの寸法である。
長袖以外は任意の寸法となる。上衣に長袖を選んだ場合の長さの決定に使われるが、袖はスラックスなどの裾とは異なり「寸法直し」を前提としていないので、正確な計測が必要である。

8「腰丈」
 ウエストラインからヒップラインまでの長さを右わきで計測した寸法のことである。
 スラックスやスカートなどの場合、上端をウエストラインに置き、最大部をヒップラインに置くことが多い。そしてそこから下方にかけて「広がる」「そのまま」「すぼめる」などの各種意匠が試みられる。「腰丈」はその際の基準点としての意味を持つ。

9「股上」
 ウエストラインから座面までの長さを右わきで計測した寸法である。当然座位による計測となる。
 おおむね骨盤の上下の高さを知る資料となる。骨盤は性別によって大きさや形態が大きく異なるので計測する必要がある。

10「渡り寸法」
 直立した状態での腰部の前後幅(厚み)のことである。腰部は個人差により「前後に扁平な腰」と「前後に立体的な腰」がある。したがって既述の「腰囲」だけでは計測できない要素があり、それを補完する意味で重要である。特にスラックスなどの場合には「渡り寸法」を考慮しないと、股間がきつかったり緩かったりすることになる。