日本女子大学・家政学部通信教育課程・食物学科
教職課程リポート

科目「家庭看護学」

課題「痴呆高齢者の看護についてまとめなさい」

評価「(合格) コメント→テキスト以外の文献にも多くあたり知識を深めて下さい」

参考文献「家庭看護学の教科書、高校家庭科の教科書(東京書籍と実教出版の2種)」

「痴呆の原因を明らかにする」
 痴呆は高齢による「もの忘れ」と混同されやすいが、中には病的な原因によるものもある。したがって痴呆の症状が見られる場合には、まずその原因を明らかにしなければならない。それは家族が勝手に判断できるものではないから、専門医による検査が必要である。その際、家族は高齢者に見られた痴呆症状の内容や進行状況を正確に把握し、医師に対して説明できるようにしておかなければならない。痴呆は看護の仕方によっては改善がみられたり、その進行を遅らせることも可能であるから「高齢だから痴呆は仕方ない」というあきらめのような態度で放置するようなことがあってはならない。
 痴呆の本質は脳の神経細胞の破壊である。神経細胞は再生することがないのであるから、当然加齢とともに減少し、その結果として高齢者の「もの忘れ」が起きる。しかしながら病的な原因で神経細胞が破壊されるケースがあり、その治療いかんによっては痴呆の改善が可能となることもある。病的な痴呆の主な原因としては「脳血管性痴呆」「アルツハイマー型痴呆」がある。
「脳血管性痴呆」とは、脳の動脈硬化による脳梗塞で脳内へ血液が運ばれなくなり、神経細胞が死滅することによって起こる。わが国での病的な痴呆の50〜60%がこれにあたる。痴呆の症状は破壊された神経細胞の部位によって異なる。症状は必ずしも進行性でないことが多い。
「アルツハイマー型痴呆」は、原因については諸説ありいまだ不明である。わが国での病的な痴呆の20〜30%がこれにあたる。実際に痴呆が現れるまでに長い年月を要する進行性の痴呆である。症状は3〜4期に分けられる典型的な症状に沿って進行する。
 その他にも「仮性痴呆」と呼ばれるものもある。これは痴呆の器質性障害がないにもかかわらず、一見して痴呆のような症状を示すものである。はっきりと「うつ病」と診断された場合には抗うつ薬の投与で改善する。

「痴呆高齢者の看護」
@痴呆の経過の把握
 痴呆の症状には大きく「進行性のあるもの」と「ある状態に留まっているもの」がある。「アルツハイマー型痴呆」は前者であり、「脳血管性痴呆」は後者である。看護者は痴呆者の症状を観察し、その経過を正しく理解したうえで看護にのぞむ必要である。
A残存する精神活動を引き起こす
 痴呆高齢者の行動には、健常者から見た場合問題となるものが多い。しかしながらその行動には何らかの理由や目的があるはずであり、それが痴呆によって正常な方法をとっていないケースが考えられる。したがって看護者は痴呆者が「何をしたいのか」に関心を持ち、それらを理解するようにつとめ、正しい行動を痴呆者が想起できるように対応しなければならない。また痴呆により意思疎通がうまくこなせなくなっているケースもあるので、痴呆者が「どのような気持ちなのか」を考え、ゆっくりとした単純な話しかたを心がけるなどして、相手のペースにあわせて対応し、相互の意思疎通がはかれるように努めなければならない。
B身体の状態を最善な状態にする
 外傷、骨折、感染症などは痴呆の程度を悪化させる要因となるので、このような疾患の予防を心がける。とくに高齢者は運動能力や免疫能力が衰えているので、高齢者の行動に大きな負担をかけたり怪我の原因となるような家屋や家具の構造や、寝たきり状態での床ずれ、失禁による衛生面の管理などに充分な配慮が必要である。
 また食事に関しても、痴呆者自身の管理能力が望めないため、栄養不良になりやすく体調の維持が難しい。したがって看護者による適確な栄養管理が必要となる。
Cよりより環境づくりをする
 痴呆者に限らず一般に高齢者は「自己の存在意義の喪失感」「社会とのかかわりの減少」「人づきあいの減少」「身体運動の減少」「外界への無関心」「新たな刺激に対する感動の減少」などを生じやすい。看護者がこれらを排除すべく、何らかの刺激を意図的に与えることが必要である。また看護行為が特定の者にのみ負担を与えるようであってはならず、協力や協調が求められる。
・見当識の改善
 痴呆者がいまどこにいて何が起こるのかをそのつど説明する。また目印になるものを表示したり、本人や看護者に着用させ、まわりの状況が理解しやすいようにする。これにより、自ら判断する精神機能を刺激することができる。
・社会的接触の機会を増やす
 長期間変化のない情況に痴呆者をおくことは、精神に刺激を受けないこととなる。したがって意識的に家族や仲間との接触や会話の機会を作ることが必要である。また散歩や買い物、親類や知人への訪問、旅行などの日常とは異なった環境に連れ出すことも有効である。
・ふつうの環境を作る
 痴呆者が慣れ親しんできた物や、大切にしている物を身の回りに置くようにすると、昔を思い起こす助けになることが考えられるので、該当する品物や環境などがあれば試みてみる。
・ 自分でできる動作を継続させる
 看護者が痴呆者の世話をすべて行ってしまうと、痴呆者の心身機能の低下を招くことがある。したがって痴呆者ができることは、たとえそれが不完全なものであっても、適当な介助や助言などを与えつつ、できるかぎり当人に行わせるようにする。
・看護する者同士が力をあわせる
 痴呆者の看護は、看護する側にも多大な負担を強いるものである。場合によっては看護者の生活が破綻してしまうことも考えられる。したがって看護する側に家族がいる場合には、それらの相互理解や協力が必要となる。また家族がいない、あるいは家族の協力が望めない場合などには、公的サービスの利用なども考慮すべきである。